豊かな色彩が伝える命の輝き、世界の秘密

エルミタージュ美術館学芸員
アレクセイ・ボゴリュボフ

髙橋文子氏は、高い芸術性と観る者を思わず笑顔にする独特のチャーミングさが絶妙なバランスで保たれた絵画表現の中に、己のありのままの感情と深い哲学性を投影し、人々に驚きと感動を与えるアーティストである。誰もが慣れ親しんだ風景でさえも、髙橋氏は鋭い観察眼と鮮やかな色の魔法を駆使して、瞬く間に特別な空間へと生まれ変わらせてしまう。

なかでも、髙橋氏が描き出す「海」には、我々にとってなじみ深いあの景色とは明らかに異なる不思議な魅力が宿っている。オリジナリティに富んだ色彩表現と大胆な構図で描き出される、大らかで崇高な水中世界。海の底では踊り、歌い、遊ぶ生き物たちが華やかに描かれる。彼らは神が創りし命の象徴である。髙橋氏が、海や命あるもの、この世界全体に対して並々ならぬ愛情を抱いているということは、作品を目にした誰もが痛感するところであろう。己の目に映る世界の美しさを芸術的観点から再構築し、人々へと伝え続ける素晴らしいアーティストである。一方で、現代的な感性を有しながらも、髙橋氏は伝統的な日本文化を重んじているようであり、歴史を大切に受け継ぎながら新しい表現へと昇華することで過去と現代、未来をひとつに結びつけている。東洋と西洋の芸術文化を融合させたような独特の構図や、創意あふれるデフォルメ表現など、髙橋氏は常にアートに対して勇敢な挑戦者であり続けることで、鑑賞者の心を清らかな感動で満たし続ける。日本的な要素を持ちながらも未だ誰も見たことがない、日本画の新たな可能性を感じさせる世界観は実に見事である。

そして何より、髙橋氏の色遣いからあふれ出る驚異的な表現力には圧倒されるばかりであった。ある時は瑞々しく鮮やかに、またある時には独特の質感を伴い深くしみじみと、髙橋氏は誰もが見落としがちなこの世界の秘密をその豊かな色彩表現を通じて伝えてくれる。目の前に広がる美しい風景を通じて、人々は命とは何なのかを知るのである。

0